会長挨拶 学会設立の経緯 社会系教科教育学会は,「学校教育における児童・生徒の社会的資質形成に関する教育実践の科学的研究を行い,その普及と発展に寄与すること」を目的として,平成元(1989)年の11月26日に設立されました。その設立発起の呼び掛け文の中に次のように設立趣旨が述べられています。「学校教育に関する教育実践的研究の促進を理念とする本学(兵庫教育大学)は創設以来10年を過ぎ,社会系教育講座の修了生は300名近くとなり,全国の小・中・高の学校,教育センター,教育研究所,教育委員会等にて活躍されています。しかしながら,本学修了後においては,教育実践的研究を発展させていく研究機会が少ない現状です。その為,本学修了後における継続的研究機会の必要性が,数多くの修了生の方々から指摘されてきました。さらに,最近では教育実践に関する研究会が全国各地に設けられ,多くの先生方において学校教育での教育実践的研究の関心が非常に高まってきております。 また,本年3月に告示さました新学習指導要領に見られますように,わが国における社会科の教科編成が大きく変わることになりました。その意味では、戦後わが国における民主主義社会の建設と発展に寄与する児童・生徒の育成に,重要な役割を果たしてきた社会科教育の理論と実践が改めて問われている状況であります。 これらの状況から,本学の修了生ばかりでなく,全国各地において社会科の教育実践の研究に励まれておられる諸先生方のご参加を求めて,社会科の教育実践に関連する情報の発信基地としての学会を設立することは意義あるものと考えられます。」 (平成元年8月 兵庫教育大学社会系教科教育学会設立発起の呼び掛け文より) 本学会は,社会科の教育実践研究を基本的性格として,兵庫教育大学大学院の社会系教育講座の修了生を核にして創設されました。当初の会員総数は,173名(一般会員148名,学生会員25名)で,第1回の研究大会が,平成元(1989)年11月26日(日)に兵庫教育大学にて83名の参加者を得て開催されました。設立総会にて,本会の会則,予算・事業案の議決がなされ,初代会長として昭和55 (1980)年度に兵庫教育大学に赴任され,平成元(1989)年度に国立教育研究所へ転勤された星村平和先生が選出されました。また,研究大会の内容としては,講演と研究発表がなされました。講演は,代表理事の岩田一彦先生が「新学習指導要領・初等社会科の理念と展開」の演題,会長の星村平和先生が「新学習指導要領・中等社会科の理念と展開」の演題で実施されました。研究発表は,2分科会に別れ,各分科会とも午前に6発表,午後に4発表の合計20発表が行なわれました。 翌年の平成2(1990)年10月には,平成元(1989)年3月に兵庫教育大学大学院社会系教科教育修了生の論文掲載誌として刊行された『社会系教科教育学研究』第2号を学会発足記念号として学会誌に衣替えを図り,本会の機関誌を発行しました。本記念号では,会長の星村平和先生の「社会科教育実践の新しい課題」の論稿を含めて,大学教員と本学の修了生の方々16名の論文が掲載されています。以後,本会では研究会の開催と機関誌の発行が主な学会活動とされ,現在に至っています。その間,平成8(1996)年4月に第2代会長として岩田一彦先生が就任され,平成12(1999)年度からの本学会の日本学術会議の学術研究団体としての登録に尽力されました。 平成16(2004)年度には,第3代会長として中村哲先生が就任され,学会創立20周年を迎え,20周年記念として,これまでの研究活動と成果を授業理論の実践化と,授業実践の理論化の両面から検証した書籍『社会系教科教育研究のアプローチ〜授業実践のフロムとフォー〜』を刊行しました。また,平成24(2012)年4月から第4代会長として原田智仁先生が,平成26(2014)年4月から第5代会長として米田豊先生が就任されました。米田会長は,学校現場との連携プロジェクト推進を提唱され,着実な研究成果を残されています。平成30(2018)年には,学会創立30周年を迎え,30周年記念として,研究発表大会を開催し,社会系教科教育学研究も学会発足30周年記念誌として,刊行されました。平成31年(2019)年からは,第6代会長として,關浩和先生が就任されて,新たな活動が求められています。学会創立記念日の11月26日には,学会発足30周年記念として書籍『社会系教科教育学研究のブレイクスルー−理論と実践の往還をめざして−』が刊行されました。さらに,令和元(2019)年の新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて,教育界は急展開を見せています。テレワークやオンライン授業,対面とオンラインのハイブリッ ド授業,ハイフレックスやオンデマンド型の授業などが定着してきた状況の中で,現在,学校現場では, 一人一台端末やデジタル教科書にシンボライズされる GIGA スクール構想や個別最適化する学び(AL)など,学校現場においては喫緊の課題が顕著になっています。 今,学会には,新しい教育のあり方を具体的授業レベルで提言することや,これまでの理論と実践を往還しながら,学会としての研究成果を公表していくために,令和4(2022)年度から新たな事業として『社会系教科教育学研究』の別冊『社会系教科教育学論叢』を不定期で刊行します。特化するテーマは,学会創立 30 周年記念として刊行された『社会系教科教育学研究のブレイクスルー−理論と実践の往還をめざして−』において,社会系教科教育学研究における課題として示した@カリキュラム・マネジメントA資質・能力(コンピテンシー)育成B授業デザイン論(歴史研究,外国研究,授業研究,ESD 研究等を含む)C評価研究D教師教育の5つの鍵概念に,GIGA スクール構想やエドテック活用を内包して,新たに次の4つの分野@カリキュラム・ 教科内容論,A授業構成論,B評価研究,C教師教育で再構成をしています。学会創立 40 周年に向けて,小さな一歩ではありますが,新たな歩みを進めていきたいと思っています。令和6(2024)年4月からは,第7代会長として,吉水裕也先生が就任されて,新たな活動が求められています 歴代会長 初代会長 星村 平和(1989年11月〜1996年3月) 第2代会長 岩田 一彦(1996年4月〜2004年3月) 第3代会長 中村 哲 (2004年4月〜2012年3月) 第4代会長 原田 智仁(2012年4月〜2014年3月) 第5代会長 米田 豊 (2014年4月〜2019年3月) 第 6代会長 關 浩和(2019年4月〜2024年3月) 第7代会長 吉水 裕也(2024年4月〜現在に至る) 学会役員(2024年4月1日〜2026年3月31日) 学会名誉会員 |