本文へスキップ

社会系教科教育学会は,社会的資質形成に関する教育実践の科学的研究を行い,その普及と発展に寄与することを目的とした学会組織です。

TEL. 0795-44-2306

〒673-1415 兵庫県加東市下久米942-1

シンポジウムテーマ
 社会系教科教育における教員の資質・能力を問い直す
     −理論と実践のブレイクスルー−

 社会系教科教育学会では,1989年の創設以来,社会系教科教育実践に重点をおいて,理論を実践化する,そして,実践を理論化することを目指し,教育実践的研究を展開してきた。例えば,実践をとおした授業改善や,研究者と教員による協働の在り方が模索されてきた。一方で,現職教員には授業の遂行力がすでに備わっていることが前提とされてきた感があり,支援しなければならないととらえられてきた資質・能力には偏りがあったのではないだろうか。これらを含め,社会系教科教員の資質・能力をとらえ直すための議論が必要であると考えた。
 学会設立30周年を迎えるにあたって,教員養成教育,教職大学院教育,学校現場研修における社会系教科教育研究の現状及びこれまでの成果と課題を批判的に検討し,今求められている新たな課題を明らかにすることで,教員の資質・能力の枠組みを再考し,学校教育の現場が抱える実践上の諸問題を解決する契機としたい。
 

コーディネーター      兵庫教育大学       吉水 裕也
              兵庫教育大学       山内 敏男
指定討論者         兵庫教育大学       米田 豊
シンポジスト        武蔵大学         武田 信子
              宮崎大学         吉村 功太郎
                西宮香風高等学校     石川 照子

課題研究T
 教員養成教育のブレイクスルー

 教員養成教育は,大学の教員養成課程で大学教員が行うものがその中心である。しかし,教育実習や学校インターンシップ,あるいは教育委員会が教員志望の学生に対して開講している教師塾などのプログラム等において,現職教員は指導担当教員や講師という立場で教員養成教育の一翼を担っている。このような学校教育現場での学生に対する指導や取組は,大学での教員養成教育に大きな影響を与えるものとなっている。
 教員の大量退職・大量採用の流れが続く中,大学を卒業したばかりの新任教員であったとしても,「即戦力」であることが強く求められている。この状況を背景として,教員養成課程をもつ大学に対して教職課程コアカリキュラムに基づく再課程認定が行われた。また,各教育委員会では教員養成協議会を設置して育成指標を策定し,採用時から管理職に至るまでの各段階において,教員が身に付けておくべき資質・能力を明確に示すようになった。しかし,各教科の指導法のコアカリキュラムや育成指標の学習指導に関する項目には,各教科レベルの具体的な専門性が示されてはいない。教員養成教育に関する研究は,その必要性や重要性にもかかわらず,十分進んでいるとは言い難い状況であり,社会系教科における教員の資質・能力の育成を視点とした研究に関しても同様である。教員養成教育の機会が大学だけでなく学校教育現場にまで広がっている現在,大学教員だけでなく,様々な機会に学生の指導に当たってきた現職教員にも,実践知が豊富に蓄積されているはずである。登壇者の先生方には,教員養成教育に関わるこれまでの取組やそこで得られた知見を語っていただくとともに,フロアの皆様の知見も加え,それらを交流することをとおして,本分科会を社会系教科における教員の資質・能力について考える場としたい。そのことが,これからの社会系教科教育を担う若い教員のよりよい育成や,教育・研究そのものの質の向上へとつながれば幸いである。

コーディネーター       畿央大学          小谷 恵津子
指定討論者          大阪体育大学        岡崎 均
課題研究発表         京都ノートルダム女子大学 大西 慎也
               東大阪市立花園北小学校   澁谷 友和
               御所市立葛上中学校     東元 信浩

課題研究U
 教職大学院教育のブレイクスルー

 社会系教科教育研究は,大学院修士課程が全国に設置されたことが一つのきっかけとなり発展してきた。しかしながら,修士課程での現職派遣等が研究室での理論研究に偏り,必ずしも今日の学校教育が抱える学力問題に関連した授業改善に結び付いていないとの批判との中で,平成20(2008)年4月から新構想の三大学を含めて全国の国公私立20大学に教職大学院が創設された。そして,理論と実践の往還を課題に,実習科目に重きを置く研究・指導体制が確立されてきた。教職大学院のカリキュラムは従来の修士課程の30単位から,約1.5倍の45単位以上を履修する。5領域の共通科目(概ね20単位),専門科目,10単位の実習科目の三層構造から構成され,共通科目と専門科目の学びの理論を実習科目の中で実践し,検証することで実践知を理論知の再構成に繋げている。そのため,実務経験が豊富な実務家教員の指導により,研究者視点に偏ることなく実践面からの指導が強化されてきている。平成29(2017)年8月に出された有識者会議の「報告書」によれば,教職大学院の課題について,次のように述べられている。
・原則,教員養成に関わる専攻は修士課程から教職大学院に移行(重点化)
・「理論と実践の往還」の手法を活用した,新たな教育課題や最新の教育改革動向への対応
・各教科等において新学習指導要領の3つの柱に基づいた資質・能力を児童生徒に教授できる教員の養成
 登壇者の先生方には,自己の教職実践歴をふりかえって実践に役立つ理論をどこでどのように学んできたのか,また,それらの理論と実践にどのように活用してきたのか,授業実践の中から新たな理論をどのように作り変え,または作り上げていったのか,それぞれの立場から「理論と実践の往還」をキーワードに実際の授業実践の事例を紹介していただく。このような課題を踏まえ,修士課程から教職大学院重点化の組織改革の流れの中で,今一度,教職大学院教育における「理論と実践の往還」について,フロアの参加者の皆さまとの意見交換・議論を通して考えてみたい。

コーディネーター       鳴門教育大学        西村 公孝
指定討論者          山梨大学          服部 一秀
               宮崎大学            吉村 功太郎
課題研究発表         愛知教育大学        大島 清和
               鳴門教育大学附属中学校   大谷 啓子
               西宮市立用海小学校     恒吉 泰行

課題研究V
 学校現場研修のブレイクスルー

 教員の大量退職・大量採用の影響により経験の浅い教員が増加する中,教員の資質向上が求められている。平成27年12月,中央教育審議会答申「これからの学校教育を担う教員の資質向上について」が出され,次いで,養成,採用,研修の一体化による教員の資質向上を図るための教育公務員特例法の一部改正が行われた(平成29年4月1日施行)。そこでは,教員等の任命権者は,教育委員会と関係大学等で構成する協議会を組織し,教員の資質の向上を図るための指標を定めるとされた。このような教員の資質向上に関わる行政的な動きの中で,今回,学習指導要領も改訂された。
 一方,学校現場における社会系教科目に係る資質向上,研修の状況といえば,小学校では,社会科以外の教科も教えなければならず,かつ各学校の研究テーマが社会科であることはごく稀で,社会科の研修,授業研究の機会は極めて限定的である。中学校では,生徒指導やクラブ指導など多忙な中,学校全体での教科を越えた研修は行われても,各教科の研修となると,教科担当の人数の問題もあり,個々の教員に任されているのが実情ではないか。高校では,さらに専門性の名のもとに,個人に任される傾向が強いのではないか。
 このような状況の中で,これまでの社会系教科教育研究および研究者の成果や英知は,学校現場研修からみると,教員の資質向上にどのように資することができるのか。これまでの成果の何が活用でき,何がより必要とされているのか。
 本課題研究では,学校,民間教育団体,教育研修所,さらには管理職という立場,かつ小・中・高という校種も踏まえながら,それぞれの登壇者から,社会科教育実践に係る教員の資質向上を図るための課題を提起していただき,その克服のためには何をどうする必要があるのか。そこに,これまでの社会系教科教育研究および研究者の成果や英知をどう活用することができるのか,何が求められるのか,を提案していただく。そしてフロアの参加者の皆さまとの意見交換・議論を通して,社会系教科教育の理論と実践のブレイクスルーを期待したい。

コーディネーター       四天王寺大学          中本 和彦
指定討論者          西宮香風高等学校        石川 照子
課題研究発表         竜王町立竜王西小学校      松浦 雄典
               立命館大学           河原 和之
               広島県立教育センター      平田 浩一


戻る

バナースペース

社会系教科教育学会

〒673-1415
兵庫県加東市下久米942-1

TEL 0795-44-2306
FAX 0795-44-2306



事務局から発送した文書が返送されてきています。新住所を事務局まで連絡してください。